経口中絶薬は病院で買える?値段や効果も解説

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2023年4月に日本でも中絶薬承認

2023年日本初の経口中絶薬承認とその要件

厚生労働省は2023年4月28日、ラインファーマ株式会社の「メフィーゴパック」という経口中絶薬の製造販売を承認しました。これはミフェプリストン、ミソプロストールの2種類の薬剤を同梱したパック製剤です。

中絶薬は世界保健機構(WHO)も推奨する中絶方法の1つではありますが、日本では最近になるまで承認されませんでした。

本記事では経口中絶薬の概要や、当クリニックの中絶薬に対する考え方などについて紹介します。

監修医紹介

梅田駅前婦人科クリニック院長 吉田 悠晋(よしだ ゆうしん)医師

吉田 悠晋 医師

梅田駅前婦人科クリニック 院長(産婦人科専門医)

日本産科婦人科学会専門医として、産婦人科の病院にて研鑽を重ね、2025年7月に梅田駅前婦人科クリニックを開業。患者様の気持ちに寄り添いながら、丁寧で誠実な診療を行う。

中絶薬は病院で買える?購入方法は?

日本では厚生労働省が中絶薬の製造販売を承認していますが、母体保護法指定医の処方が必要です。そのため、どこの薬局や病院でも気軽に購入できるというわけではありません。また、個人輸入も禁止されています。

「中絶薬は通販で買えるの?」という疑問をお持ちの方も多いのですが、通販での販売は薬事法および薬剤師法に抵触する違法行為です。

中絶薬が正当に使用されなかった場合、中絶薬による堕胎が堕胎罪という罪に問われる可能性があります。通販や個人からの安易な購入はせず、母体保護法指定医に処方してもらってください。

中絶薬による大きな健康被害があった事実などを踏まえ、厚生労働省も中絶薬の個人輸入を問題視し、注意喚起を行っています。自己判断での中絶薬の購入や使用は絶対にやめてください

参考:東京都健康安全研究センター|経口妊娠中絶薬に関する注意喚起について

梅田駅前婦人科クリニックでは中絶薬を取り扱っているのか?

梅田駅前婦人科クリニックでは、中絶薬を取り扱っていません

患者様の身体的および精神的負担、中絶薬の費用、健康リスク等を総合的に判断した結果です。

中絶薬のリスクや副作用については、後ほどくわしく解説します。

中絶薬(メフィーゴパック)とは?

中絶薬(メフィーゴパック)は、ミフェプリストン、ミソプロストールの2種類の薬剤を含む薬剤です。妊娠9週(妊娠63日)までに内服する必要があります。各成分の詳細や効果の仕組み、飲み方などを解説します。

中絶薬の効果と仕組み

中絶薬は妊娠を中断させる効果を持ちます。これは中絶薬に含まれる、ミフェプリストン、ミソプロストールによるものです。

ミフェプリストン

ミフェプリストンはプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンの働きを阻害する効果があります。プロゲステロンは妊娠状態を維持する役割を持つため、このホルモンの効果が阻害されると、子宮粘膜が妊娠していない状態に戻るのです。その結果、妊娠状態が継続できなくなります。

ミソプロストール

ミソプロストールには、子宮を収縮させる働きを持つプロスタグランジン製剤の1種です。ミフェプリストンによって妊娠が継続できなくなった子宮内容物を、体外に排出する効果があります。

中絶薬を服用しようとしている女性

中絶薬の正しい飲み方

中絶薬は身体に大きな影響を与えるため、誤った飲み方をすると大きな健康被害をもたらす可能性があります。必ず、正しい方法で服用しましょう。

正しい飲み方は以下の通りです。

  • 1. ミフェプリストン錠1錠を経口内服する
  • 2. 36~48時間後、患者様の状態に合わせ、ミソプロストール錠4錠を30分かけて口腔粘膜から吸収する
  • 3. 30分間静置した後、口腔内にミソプロストールの錠剤が残った場合は飲み込む

中絶薬は使用者が確実に服用したことが確認できる場合にのみ処方可能で、非常に厳格な使用が求められます。

実際に厚生労働省は中絶薬について、「対象の妊婦(=患者)は、入院もしくは2回の受診の必要があり、薬剤の服用はいずれも医療機関内にて行う。ミソプロストール服用後は入院(院内待機)になる」と説明しているほどです。

入院、外来のどちらでも使用は可能とされていますが、上記の説明にもある通り、中絶が確認できるまでは院内待機が必要です。そのため、入院設備の整っている医療機関のみで、中絶薬の使用が認められています

参考:いわゆる経口中絶薬「メフィーゴパック」の適正使用等について

中絶薬の副作用やリスク

中絶薬の副作用として、以下のものが挙げられます。

中絶薬の副作用 膣からの出血、腹痛、下痢、吐き気、頭痛、めまい、腰背痛 など

特に注意しなければならないのが、膣からの出血です。大量に血が出るケースもあり、場合によっては外科的処置を施さなければ止血できないこともあります。

また、我慢できないほどの腹痛や頭痛、吐き気のほか、激しいめまいなどが起こることもあります。個人で中絶薬を使用すると、副作用に対処できないため、非常に危険です。

必ず、母体保護法指定医の指示に従って中絶薬を使用してください。

参考:個人輸入される経口妊娠中絶薬(いわゆる経口中絶薬)について

中絶薬のリスクは?中絶薬手術との比較

中絶の方法として経口薬の服用以外に、手術があります。両者を「費用・要する時間・身体への負担」の観点で比較しました。

中絶薬(メフィーゴパック) 中絶手術
費用 経過観察のための入院費用と合わせて数万~数十万円 一般的には10万~25万円程度
要する時間

1つの薬剤を服用して36~48時間後に2つ目の薬剤を服用。

その後。24時間程度かかかって中絶

  • ・手術は自体は15分程度
  • ・日帰り手術も可能
身体への負担
  • ・膣からの大量出血の危険
  • ・感染症による死亡例の報告(海外)
  • ・7%程度の確率で中絶が完了しなかったというデータあり
  • ・後遺症リスクは低い
  • ・術後の不妊リスクは低い
  • ・麻酔を使用することで痛みを軽減できる
  • ・1回の手術でほぼ確実に中絶できる

参考:メフィーゴパック

中絶薬(メフィーゴパック)

費用

経過観察のための入院費用と合わせて数万~数十万円

要する時間

1つの薬剤を服用して36~48時間後に2つ目の薬剤を服用。

その後。24時間程度かかかって中絶

身体への負担

  • ・膣からの大量出血の危険
  • ・感染症による死亡例の報告(海外)
  • ・7%程度の確率で中絶が完了しなかったというデータあり

参考:メフィーゴパック

中絶手術

費用

一般的には10万~25万円程度

要する時間

  • ・手術は自体は15分程度
  • ・日帰り手術も可能

身体への負担

  • ・後遺症リスクは低い
  • ・術後の不妊リスクは低い
  • ・麻酔を使用することで痛みを軽減できる
  • ・1回の手術でほぼ確実に中絶できる

「手術よりも薬を飲むほうが簡単で安全そう」というイメージから、中絶薬の使用を検討する方は少なくありません。

しかし、上記の表の通り、中絶薬と中絶手術を比較して「中絶薬の方が手軽で安心」とはいえません。

例えば、手術であれば日帰りで完了するうえに、ほぼ確実に中絶が完了するため、「手軽」と考える人も多いです。

また多くの方が心配される痛みについてですが、中絶薬は副作用によって重度の腹痛や頭痛などが生じる可能性があります。一方、中絶手術の場合は麻酔を使用するなどの対策を施すため、術中の痛みはほとんどありません。しかし、手術の場合は術前の処置で、やや強い痛みを感じる方もいます。

どちらの処置が向いているかは患者様のニーズや身体の状態などによっても異なるため、慎重に検討しましょう。悩んだ場合は医師に相談してください。

中絶薬の値段(費用)はどのくらい

中絶薬の値段(費用)はどのくらい

中絶薬による中絶を行う場合、経過観察のための入院が必要です。そのため、多くの医療機関は薬の値段だけでなく、入院費用も加算した料金プランで中絶薬の提供をしています。

各医療機関の料金設定や入院日数などによって料金は変動しますが、総額は数万円から数十万円ほどかかることが多いです。

中絶手術の費用相場が10万円から25万円ほどといわれているので、料金差はあまりないばかりか、場合によっては中絶薬の方が高くなってしまうこともあります。

ただし、中絶薬に関しては、今後の製造量や流通量などによって値段が大きく変動する可能性も否定できません。中絶薬の相場については今後の変動に注目する必要があります。

※上記相場は2025年4月現在のものです。

中絶薬で失敗することはあるの?

お腹を抑えている人の画像

中絶薬で中絶が完了する確率は100%ではありません。中絶の適応となる女性120人を対象とした中絶薬の服用の調査では、ミソプロストール服用後24時間以内に中絶が完了した人は112人(93.3%)でした。

つまり約7%の確率で、中絶薬を服用しても中絶が行われないということです。もしミソプロストール服用後24時間以内に中絶が完了しなかった場合、さらに時間をかけて中絶が完了するのを待ったり、ほかの高度な医療処置を受けたりしなければなりません。

中絶手術ではほぼ確実に中絶が完了することを考えると、中絶薬の失敗率は大きな懸念材料といえます。

参考:メフィーゴパック

日本で中絶薬の承認が遅れた理由

経口中絶薬「メフィーゴパック」の製造販売を厚生労働省が正式に承認したのは、2023年4月28日です。

世界的に傾向薬剤による中絶はメジャーな方法の1つであり、WHOも推奨しているのですが、なぜ日本では承認が遅れたのでしょうか?

主な理由は2つ考えられます。1つ目は倫理的な問題です。日本では倫理的な観点から中絶を問題視する声も多く、それが承認のハードルになっていた可能性があります。

2つ目の理由は、日本の中絶手術のクオリティの高さです。先述したように日本の中絶手術は成功率が高く、手術時間も15分程度です。精度、安全面、手術時間のすべてが優れている手術を提供できます。そのため、中絶薬の必要性が議論されにくかったのも、日本で中絶薬の承認が遅れた理由として考えられます。

承認薬も使い方や飲み方を誤ってしまえば、大きな健康被害をもたらす危険性が非常に高いです。今後、中絶薬の使用が広まっていくに伴って、安全面の意識も求められるようになるでしょう。

正しい情報を見極めて選択を

これまで紹介した通り、中絶の方法には経口薬の服用と手術があります。また、手術にもソウハ法と吸引法という2種類の方法があります。

これらはそれぞれに中絶の仕組みやリスク、副作用などが異なります。また、そもそも中絶は人生に関わる大きな出来事であり、身体的にも精神的にも負担が大きいものです。

後悔をしないためにも、中絶の実施の有無や方法については、正しい情報を参考にして、慎重に検討することをおすすめします。

一人では決断が難しい場合は、ぜひ医療機関にご相談ください。専門家の視点で、患者様に合わせたアドバイスを行います。

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お知らせ

  • 2025/06/11

    2025年7月1日(火)10時 梅田駅前婦人科クリニックが新規開院します。2025年6月24日(火)より、予約受付開始です。